緑あふれる都心のオアシスとして親しまれている中之島公園は、大阪市初の市営公園として誕生しました。

そんな中之島公園内の一角にある大阪市立東洋陶磁美術館は、世界でも数少ない、東洋陶磁の専門美術館なんです!

今回は、大阪市立東洋陶磁美術館の魅力を、美術館巡りが趣味のライター ‘ 亜梨沙@alisa_0113_ ‘ がご紹介します。

大阪市立東洋陶磁美術館とは


大阪市立東洋陶磁美術館は、世界的に有名な「安宅コレクション」を、住友グループ21社から寄贈されたことを記念して大阪市が設立した美術館で、1982年11月に開館しました。

※安宅コレクション:後漢から明代にかけての中国陶磁144件、韓国陶磁793件などからなる膨大なコレクション

“東洋”陶磁美術館という名のとおり、中国・韓国・日本の陶磁器が展示されている、国宝2点、重要文化財13点を含む約7000点の館蔵品を持つ、東洋陶磁器のコレクションとしては世界一級の美術館です。


『Heterophoney2』 秋山陽  2008年
館内には現代陶芸家の作品も。

大阪市立東洋陶磁美術館 館内の様子


1階で受付を済ませ、展示室のある2階へ。


中国・韓国・日本の国別に展示が分けられた平常展をはじめ、特別展・特集展など、時期によって様々な展覧会が開催されています。


なんと、美術館としては珍しく、写真撮影OKでした!

※展示物によって、撮影不可の場合もあります。

韓国陶磁室(展示室A・B・C)


韓国陶磁室では、高麗時代(918~1392年)から朝鮮時代(1392~1910年)にかけて作られた陶磁器が展示されています。

展示されている主な陶磁器は、‘ 青磁 ‘ ‘ 粉青沙器(ふんせいさき)’ ‘白磁’ などです。


青磁は、青緑色の釉薬(ゆうやく、うわぐすり)がかかった高級感あふれる花瓶やお皿です。
※釉薬:陶磁器表面を覆っているガラス質の部分

なかでも、12世紀ごろに登場する「翡色(ひしょく)」と呼ばれる深い青みを帯びた青磁は、その美しさに吸い込まれそうになると評判です♩

(左)『青磁陽刻 雲鶴文 枕(せいじようこく うんかくもん まくら)』 高麗時代 12世紀
(右)『青磁 獅子形枕(せいじ ししがたまくら)』 高麗時代 12世紀

実際に使用されていたという枕。オシャレですが、とても寝にくそうです、、、


『白磁 壺(はくじ つぼ)』 朝鮮時代 18世紀

白磁は、白素地に無色の釉薬がかかっており、清廉や高潔といった印象を与えてくれます。

こちらは志賀直哉から東大寺元管長・上司海雲師に贈られた壺で、一度泥棒に粉々に割られた後、復元したものなんだとか!


粉青沙器も、沢山ありましたよ。
※粉青沙器:鉄分の多い陶土にきめ細かい白土釉で化粧掛けを施し、透明釉を掛けて焼造したもの。

李秉昌コレクション 韓国陶磁室(展示室D)


こちらは、在日韓国人である李秉昌(イ・ビョンチャン)博士が日本で収集した韓国陶磁301件を中心としたコレクションです。


李秉昌(1915-2005)博士は、1949年に外交官として日本に赴任したのち、実業家として日韓貿易に従事。その中で、数々の韓国陶磁を収集されました。

韓国文化遺産の発揚のため、貴重なコレクションを日本に留めるとし、大阪市立東洋陶磁美術館に寄贈することを決意したそうです。

李秉昌博士、寄贈、有難うございます♡


個人コレクションとしては、世界的な質と量を誇っているそうですよ。


(左)『緑釉 盒(りょくゆう ごう)』 統一新羅時代 8世紀
(右)『鬼面文 塼(きめんもん せん)』 統一新羅時代 8世紀

個性的なものから


正統派っぽいものまで、様々な韓国陶磁がありました。

日本陶磁室(展示室E)


勿論、日本の陶磁器も展示されています!


『色絵相撲人形(二組)(いろえ すもうにんぎょう)』肥前・有田窯  江戸時代 1680年代頃

日本感があって素敵ですね。


(左)『須恵器 長頸瓶(すえき ちょうけいへい)』 奈良時代 7世紀末
(右)『灰釉 鎬文 壺(かいゆう しのぎもん つぼ)』 瀬戸窯 南北朝時代 14世紀中葉

大型の長頸瓶や、独自の風格を持つ中国陶器の写しなど、珍しい陶磁器も。


(左)『色絵 草花文 瓶(いろえ そうかもん へい)』 肥前・有田窯 江戸時代 17世紀 
(右)『色絵 牡丹椿文 八角壺(いろえ ぼたんつばきもん はっかくこ)』 有田窯 江戸時代 17世紀後半   

こちらは華やかで可愛いです。


『大甕(おおがめ)』 越前窯 室町時代 15~16世紀  

堂々としていて、とても大きい、、、
器表のほぼ半分に「なだれ」と形容される自然釉が豪快に流れ落ちる景色は、圧巻でした!

特集展示(展示室F)


取材当時、特集展「受贈記念 井コレクション 灯火具―ゆらめくあかり」が開催されていました。
江戸時代後期を中心とする陶磁器製の灯火具、約25点が紹介されています。

※2019年12月8日(日)まで


(左)『鉄釉白菊文行灯皿 (てつゆうしらぎくもんあんどんざら)』 瀬戸焼 江戸時代 19世紀
(右)『鉄絵吹墨唐子文行灯皿(てつえふきずみからこもんあんどんざら)』 瀬戸焼 江戸時代 19世紀

柄が凝っていて、可愛い行灯皿たち。


燭台も装飾性豊かです。


あかりを灯すための道具である灯火具が、こんなにも多様に展開されていたなんて!驚きです。

中国陶磁室(展示室G・H・I)


中国陶磁室では、1万年以上の歴史を有する中国の陶磁器が展示されています。


『緑釉 楼閣(りょくゆう ろうかく)』 後漢時代 2~3世紀

古代中国では、来世でも現世と変わらぬ暮らしが出来るよう、権力者たちは模型や俑などの明器を墓に副葬したのだとか。
四階建てのこの楼閣は、当時の最先端の高層建築です。


『加彩 婦女俑(かさい ふじょよう)』 唐時代 8世紀

ふっくらした女性、チャーミングです!

(左)【重要美術品】『三彩貼花 宝相華文 壺(さんさいちょうか ほうそうげもん つぼ)』 唐時代 7~8世紀
(右)『三彩 獅子(さんさい しし)』 唐時代 8世紀

多色釉の装飾が華やかです。


【重要文化財】『青花 蓮池魚藻文 壺(せいか れんちぎょそうもん つぼ)』 景徳鎮窯 元時代 14世紀

存在感抜群の魚が目を引きますね。


『黄地紅彩 龍文 壺(おうじこうさい りゅうもん つぼ)』 景徳鎮窯 16世紀

徳の高い色をしていて、鮮やかです。

国宝

中国陶磁室には、2つの国宝も展示されています!


【国宝】『油滴天目 茶碗(ゆてきてんもく ちゃわん)』 建窯 南宋時代12~13世紀

建窯(けんよう)という窯で作られたお茶碗で、油の滴のように金や銀に輝く斑点があることから、この名前がついたのだとか。
なんと!!日本に8点しかない、国宝茶碗のひとつ!!貴重です。


【国宝】『飛青磁 花生(とびせいじ はないけ)』 龍泉窯 元時代13~14世紀

表面に鉄斑を散らした模様があることから、飛青磁という名前がついています。
透き通った青色で、見る人を誘惑するような妖しさがありますね。

※国宝は、展示されている期間が決まっているので、展覧会スケジュールをご確認下さい。

沖正一郎コレクション 鼻煙壺コーナー(展示室K)


陶磁、ガラス、金属など各種材質の鼻煙壺(びえんこ)が、約150点、常時展示されています。


中国の明代末期、ヨーロッパから伝わった”嗅ぎ煙草”は、中国の上流社会を中心に広まったのだそう。

その嗅ぎ煙草入れの容器である鼻煙壺の形と使い方の説明が載っていました。

(左)『象牙 蝉型鼻煙壺』 19~20世紀
(右)『象牙 胡瓜型鼻煙壺』 19~20世紀

すごくユニークな鼻煙壺も。
昆虫が苦手なので、ちょっと怖いです、、


(左)『銀陽刻 孔雀文鼻煙壺』 19~20世紀
(右)『銀陽刻 花文鼻煙壺』 19~20世紀

こちらは、ターコイズがあしらわれていて、オシャレです。


本当に色々な形、柄の鼻煙壺がありました。

喫茶サロン


美術館の受付横に、喫茶サロンがあります。
コーヒーやティーなどの飲み物や、パスタやサンドイッチなどの軽食、デザートが頂けます。


ケーキセット(900円)は、お気に入りのケーキを選べます。私はモンブランを。

美術品を鑑賞した後、コーヒーを飲みながら、お気に入りの作品について話し合う、、
最高のシチュエーションです!

ミュージアムショップ


ミュージアムショップでは、開催される展覧会のカタログ、美術関連の本、オリジナルグッズなどが購入出来ます。

スライドショーには JavaScript が必要です。

コットンバックは、図録とセットで購入すると割引(300円)になります。オシャレで可愛いグッズが沢山あるので、お土産にもピッタリです!

コインロッカー


コインロッカーは1階にあります。
コイン返却式(1回100円)なので、気軽に預けることが出来ます♪

大阪市立東洋陶磁美術館 入館料


大阪市立東洋陶磁美術館 平常展の入館料です。

※企画展・特別展の開催中は別料金です!!

大人:500円(団体400円)
高校生・大学生:300円(団体250円)
中学生以下:無料(※要証明)
障がい者手帳等をお持ちの方(介護者1名を含む):無料(※要証明)
65歳以上(大阪市内在住):無料(※要証明)
※20名より団体料金

詳しくは大阪市立東洋陶磁美術館HPをご覧ください。

アクセス


京阪中之島線「なにわ橋駅」1号出口を出るとすぐ、道路の向かいに大阪市立東洋陶磁美術館が見えます。

※地下鉄御堂筋線・京阪本線「淀屋橋駅」1号出口、地下鉄堺筋線・京阪本線「北浜駅」26号出口からも、徒歩5分程です。

まとめ


様々な東洋の陶磁器をじっくり鑑賞出来る、大阪市立東洋陶磁美術館。
本当に魅力的で素晴らしい作品が多く、見応えたっぷりでした。

皆さんも、お気に入りの陶磁器を見つけに、足を運んでみて下さいね。

大阪市立東洋陶磁美術館 施設詳細
開館時間 :午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日  :月曜日(月曜日が祝日の場合は翌火曜日が休館)、展示替え期間、年末年始
電話   :06-6223-0055
アクセス :京阪中之島線「なにわ橋駅」1号出口すぐ、地下鉄御堂筋線・京阪本線「淀屋橋駅」1号出口から約400m、地下鉄堺筋線・京阪本線「北浜駅」26号出口から約400m
住所   :大阪市北区中之島1-1-26
地図   :Googleマップ
公式サイト:大阪市立東洋陶磁美術館